第一歌集を上梓しました『月に射されたままのからだで』
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第一歌集を上梓しました
『月に射されたままのからだで』勺 禰子(しゃく・ねこ)

『月に射されたままのからだで』書影
 
わたくしごとですが、このたび初めて歌集を上梓しました。
本歌集に収めた420首は、私がこの十年の間に目にし、耳にし、触れた、さまざまなものごとの道行きの記憶です。
 
栞文はなんと、「短歌人」編集人の藤原龍一郎さん、そして「塔」選者の江戸雪さんが書いてくださいました。さらに表紙は、幻想絵画・人形作家として著名な山本じんさんが銀筆画「淤能碁呂島(オノゴロシマ)」を特別に提供くださいました。栞文と表紙カバーだけで十分すごいです(笑)。
ぜひ、お手に取っていただけましたら幸いです。勺 禰子
 
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などにも置いていただいています。

◇強い、と書いてみたけれど、ところどころで見せる罪悪感、
 抑圧された感情、行き場のない哀しみは何だろう。
 (江戸 雪・栞文「純度の高い傷、そして力」より)
 
◇自分が今生きているこの時代を凝視すること、それが
 現代の歌人の使命であることを勺禰子は熟知している。
 (藤原龍一郎・栞文「土地、言葉、時代」より)

◇自選10首
 この師走クリスマス色に彩られほんまにうれしいんか?通天閣
 すひかけのつつじがいきをふきかへしすひかへすやうなくちづけをする
 はじめてのそして最後の夕日浴び解体家屋はからだを開く
 やはらかなはなびらが母である茄子をふふめば吾に充ちるむらさき
 今生に残せるものの少なくてそのときどきの歩幅あし音
 雑巾をドーキンと呼ぶ泉州弁の祖母は呼ぶらんアベシンドーと
 それはまるで治■■■■この歌もいつか誰かに■■■■■■■
 今朝もまだ空爆のない青空で枕を寄せてまた目を閉ぢる
 キーボードに引き裂かれゐし子音母音なつかしみつつ君の名を呼ぶ
 奈良のまちを君とゆくよる日常とハレのあはひを未ださまよひ
 
 
2017年7月24日発行
四六判並製カバー装192頁
定価:本体1900円[税別]
装画/山本じん
装幀/真田幸治
【2017/11/01 03:41】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
短歌人 2017年11月号  笑はせる
奈良町に桜を植ゑしその男三年ののちプチャーチンを笑はす
 
   魯西亜使節応接図
畳、椅子、互ひの型を容れて座す幻のやうな外交ありし
 
ペリー来るプチャーチン来る地震来る嘉永こそ元祖メガクライシス
 
ディアナ号が戸田で沈んでヘダ号に生まれかはれるあはひこそ思へ
 
息あがりつつはつなつのラザフォード・オールコック越ゆ暗峠
 
植桜楓之碑残しし川路聖謨開城の江戸にピストル自死す
 
笑はせることに長けたる喉に触れその後いづこへゆきしピストル
 
                        勺 禰子(しゃく・ねこ)

※川路聖謨=かはぢとしあきら Wikipedia
※戸田=へだ
※オールコック Wikipedia
※暗峠=くらがりたうげ

川路聖謨顕彰碑 佐保川の桜

川路聖謨顕彰碑/佐保川の桜
【2017/10/28 23:16】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年10月号  山の神
神だとも怪物だとも畏怖されて山を統べをり女にやあらむ
 
赤き赤き腰巻を瀧に投げ入れて怒らせて雨を降らせたといふ
 
罪の意識を軽くしたくて怒らせると言ひしか涙かもしれぬ雨を
 
もののけの気配ありなむ科学なきこのニッポンのあまねく場所に
 
山の日は受け入れ難し唐突に祝日になる吾が誕生日
 
    一九四八GHQが廃止
還暦の翌年までを紀元節に齢重ねゐつ折口信夫
 
君の手帳に「山の神の日」と記されて捧げもの享く奈良の夏の夜
 
                    勺 禰子(しゃく・ねこ)

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【2017/09/28 16:31】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年9月号  充ちる
満月に古老は傘をさしてをりその石突にひかりを集め

巫女じみて肘、手首、はた指先に降るものを享けてことばに代へる

降りそそぐそのおほかたの見えざれば感官もろとも吾はさまよふ

日本のあれやこれやを詰め込んで帰国する人たちのゆたかさ

何万の人の歩みに揺れやまぬ地下道いつかいつか抜け落ちる

雨の気配引き入れたくて少し窓開けた夜半の厨をいとしむ

酒井さんに今すぐ電話をかけたくて泣きさうになる、泣く。電話できない。

勺 禰子(しゃく・ねこ)
【2017/08/28 18:47】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年8月号  大仏蛍
戌の刻となりて暗ければ君は手をつないで渡る転害門(てがいもん)前
 
正倉院向かひの幼稚園の芝ものの見事にゐのししは掘る
 
大湯屋の手前の沢にあくがれてひかりて消ゆる大仏蛍
 
肌寒きゆゑか盛りを過ぎしゆゑか知らねどこれほどまでのはかなさ
 
人びとが見つめる沢の真後ろのひと本の草にひかりはうごく
 
片方がすぐに冷たくなる吾を君は何度も温め直す
 
産むことのかたち一つにあらざるを思へば二月堂に十六夜
 
                      勺 禰子(しゃく・ねこ)

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【2017/07/28 11:00】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年7月号  古来外来
絵に描いたやうに日に日に萌えてゆく黒焦げだつた若草山は

なぜ山をいつから山を焼くのかと思えば領地を争ふ僧侶

天平の人らの知らぬ芝が萌ゆ焼かれては萌え焼かれては萌ゆ

アドリブの牛よくしやべる境内に予祝充ちゆくお田植祭は

駆除される外来種にも和名あり和名をもつて追はれゆくもの

貴種流離譚の貴種たち帰化せずに漂泊をすることの幸ひ

外来の吾も棲みつく奈良のまちいかなる手段で追ひ払はれん

    大仏建立「一枝の草、一把の土」
奈良らしい景色とは何「一枝の草」を持ち寄る幻をみゆ

                         勺 禰子(しゃく・ねこ)
 
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【2017/06/27 15:24】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年6月号  未だはなやぐ
積み残すだけの日日積み残しまずは今年の桜を愛でる

役割を纏はぬままの日常はいつまでたつてもハレのままにて

入浴剤の香りで少しつながれてあはきあはき家族といふもの

おかへりと言ふとき未だはなやぎは吾にきざして君をむかへる

                      勺 禰子(しゃく・ねこ)

気象台から


【2017/05/29 15:14】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年5月号  南都八景
リヤカーで押して担いで根のついた竹を運びぬ二月堂まで

南円堂前の燈籠らくがきも墨ゆゑ残ると君が指さす

プラスチックの芝生保護材あらはなり猿沢池の柳の下に

今はなき轟橋の敷石をいまだ観光気分で踏みぬ

越えずにはどこにもゆけぬ佐保川に日ごとふくらむ桜のつぼみ

しかせんべい知らぬ個体もありぬべし聖武天皇陵に住む鹿

鹿の毛並みも若草山も写真とは違ふ景色があるあたりまへ

少しづつ日常になる奈良のまち自転車にのり雲居坂のぼる

                       勺 禰子(しゃく・ねこ)

竹送り
【2017/04/28 11:17】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年4月号  宇和奈辺小奈辺
佐紀の地に前妻後妻もろともに仁徳なる人いまだ眠れず

陵墓参考地ふたつを割つて南端に瓦屋根つけて奈良基地はあり

稚拙な愛にあふれて「空が好き!」といふ戦闘機かがやく青きポスター

偽物の大極殿の上空にブルーインパルス描くハート型の雲

朝靄の大極殿の鮮やかな朱塗りはぶざま 荒野が恋し

                     勺 禰子(しゃく・ねこ)

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空が好き!?

【2017/03/31 01:50】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年3月号  追鶏祭(とりおひさい)
見えぬ鶏を追ふ所作三度繰り返す午前三時の妖しき境内
 
さまざまな罪を塗りつけられながら生きてきた鶏はそれも知らずに
 
禁忌とは渇望をさす行為ゆゑ追ひ払はれることのすがしさ
 
息長帯比売命の怒りに流されし鶏がひそかに今を息衝く
 
養鶏を奨励したといふ宮司大正デモクラシーの曙光浴びつつ
 
「たつた揚げプロジェクト」の幟はためいて竜田川に放たれし鶏をおもほゆ
 
                         勺 禰子(しゃく・ねこ)

2017往馬大社追鶏祭s

2017往馬大社追鶏祭2s
【2017/02/27 15:34】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
短歌人 2017年2月号  式年造替
八年で四度目となる引越しを終へて思ほゆ「引き越す」の意味

奈良がすき奈良はきらひと言へぬままなんとなく少しづつ慣れるといふこと

毀しかた積み上げかたを受け継ぎて春日式年造替終る

忘るることなけれど許されることもなしと思へど、二十年なり

家に場所に執着のなきまま生きてそれでも辿り着くことがある

しあはせにくらしたいなぞとつい思ふ佐保のお山を眼前にして

                         勺 禰子(しゃく・ねこ)

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【2017/01/28 00:05】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2017年1月号  題詠・欠超相当移及厳製
置きざりの母性おもへば暁闇に月の欠けらは仕舞はれてをり (欠)

「超訳」といふ号令に変質をしてゆく言葉のちからや匂ひ (超)

防衛相当惑顔の涙目の底なし沼のやうな微笑み (相当)

充たされてゆくのはこころでもからだでもないなにか口移されて (移)

及ばぬことに及ばなくてもいいことを知りゆく四十五歳の秋は (及)

威厳尊厳厳格厳密 厳の字にはつか憩ひのひとときよあれ (厳)

謹製といふとき兆すナルシズム込められしものにおののきながら (製)

                      勺 禰子(しゃく・ねこ)

今年も一年、ありがとうございました。
【2016/12/28 00:35】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2016年12月号  闘争心
大阪の素顔は憂ひ、笑みもせず笑はせもせぬ曇り日のごと

吾の知らぬ吾の血管みいだせる一筋縞蚊と揺るる地下鉄

トンネルに入りてしばらく斜めから斜めへ雨はとめどなく湧く

何か罰のやうなるものを受けんとしゲリラ豪雨とともに歩みぬ

終電を出でてきざはしのぼるとき闘争心ははつか芽生える

かみさぶる生駒のやまの般若窟 有象無象を腹に埋めつつ

                      勺 禰子(しゃく・ねこ)
【2016/11/30 02:32】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
対決ではなく対話を促す歌論―近藤芳美『新しき短歌の規定』
短歌人11月号特集「いま読み直す短歌評論」の中で、
近藤芳美の『新しき短歌の規定』について書かせていただきました。
おそらく近藤芳美を「近藤くん」と呼んだ、はじめての?恐れを知らない論考ですが、
極めて真面目に書いたつもりです。

お読みいただけましたら幸いです。
PDFはこちら

短歌人11月号目次2

短歌人11月号目次1

短歌人11月号評論

【2016/10/28 14:54】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
短歌人 2016年11月号  新しき世界
並びゆけば肩も触れ合ふ細き細きジャンジャン横丁をかの日あゆめり

   発祥と言はれしも

千成屋珈琲店のミックスジュース飲んだかどうかの記憶おぼろに

奥の席で話し込みしをいつしかに店のおばちやんが相槌ち打てり

   ひそと閉店

意外にも珈琲は洗練されて千成屋珈琲店は雑味なき店

ニュー・ワールドへたどり着くため冬の寒い雨の新世界をきみとあゆめり

見下ろせば瓦屋根多きこの街の初代通天閣の絢爛

恵美須東といふ町名はありながら常にひらけてゆく新世界
 
                      勺 禰子(しゃく・ねこ)
【2016/10/28 14:32】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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