「うなぎ」 勺 禰子(しゃく ねこ)
特急に乗り換へるとき朝おなじ家を出てきたやうな顔して 右側が急ぐ人用 エスカレーターは京都にて文化圏を分かつ 湖西線乗り込むときにどぶろくと成城石井のパフェ隠し持つ ※ 残雪に光を増せばみづうみに津波はないとふ思ひはゆらぐ ※ 今津とはもはや「今」ではあり得ぬが津々浦々に今宮、今里 ※ 駅前の商店街で購ひし鯉の煮付けを湖上でつつく 都久夫須麻(つくぶすま)神社の崖から竜王にかはらけ投げるほどのしあはせ ※ 湖岸にもかすかに波は寄すれども真水であれば匂ひを持たず みづうみに沿ひて午睡を促してバスはわれらを菅浦へ運ぶ 「かくれ里」と名付けしことの不躾を感じざりしか白洲正子は ※ 「じゆんじゆん」といふ名の鰻鍋はさみ君と真くろき竹生島(ちくぶしま)見ゆ ※ すき焼きとして食ぶるときなまめかしいほどにうなぎはやはらかくなる ※ 真夜中の無人の神の島を思ふ波間に浮かぶ宴のたけなは 君と手やその他を接ぎし場所がまたひとつ増えたり今生のみち 朝靄に浮かぶ竹生は御詠歌の「舟に宝を積むここちして」 ※ 会員1特選欄「水無月集」掲載 15首出して選歌してもらって8首載るので、 ここでは全首掲載します。 ※印が短歌人誌掲載歌 あー、ここで出したら既出歌になるか。 ま、ええかw せんないことですが、 最初から半分に削られるとわかっている連作を詠む というのは本当に、本当に、ほんたうに難しいです。 何かの暗喩でもあるかのように。 |
15首アップしてくださいましてありがとうございます。こういう作品は、やはり、一連すべてを読みたいです。
レギュラーの歌稿は別として、卓上噴水とか水無月集とか、スペシャルの企画の場合は、選アリと選ナシを選べるようにしてはどうかな? 「スピーチタイム」の最後の回の時に、「短歌人」のここをこういうふうにしたらもっと良くなるのではないか、というようなことをいくつか書こうかと思っているのですが、その中にこの件もぜひ入れようと思います。 ゆらぐ
残雪に。光を増せば、みづうみに 津波は。ないとふ 思ひに、ゆらぐ
/5/7/5/8/7 /5/7/5/4・4/4・3/ 結句……ゆらぐ。 がすべてである。 この、ゆらぐ。は東日本に触れ、ている。 文体は、現実に、触れている。 第4句が、すでに【ゆらいで】いた。 4/4。 複雑に。複雑骨折の様に。 これが大切なので。うたは肉体的の構造を持っていなければならぬ。 歌人はそれを本能的に行使して、いなければ存在する意味がない。 これは、短歌という生命体の根幹に係わる事象である。 折口信夫はそれを口を酸っぱくして言った。 が、 たれも、耳を傾けなかった。折口春洋、岡野弘彦の他は。 ここに、 勺禰子、という者が現れた。 大好(タイハオ)。 増幅させるキーワード
15首を読んで初めてストーリーが浮かんだような気がします。「湖西線」という響きが僕には未知の世界の入口のように思え、想像力を増幅させてくれます。
やはり、連作ですねぇ。。。
抜粋では駄目ですねぇ。 駄作凡作含めてのれんさくですもの。強弱あっての連作ですもの。←禰子ちゃまの歌のことじゃなくて、わたしの歌を含めての、一般的なことね^^ はじめから、八首というのも変だし。よしんば選歌するとして、佳き歌が十五首の内、十二首採れるかもしれないし、五首しか採れないかもしれないし。 通常の月例詠草は誌面の制約があって、掲載数を統一するというのも無理からぬことでしょうけれど、卓上噴水や水月集辺りは、全歌掲載しても良いんじゃないかな。それが滑った歌であったとしても、四の五の言わず載せる、のが却って見識かも。 tamayaさん、よろしく! 禰子さんの作品は,やっぱり15首でひとつですね。
全部UPしてくれて,一連にもっと心を寄せて読むことができました♪ ■みなさま
すっかり放置しておりました。 あいすみませぬ。 連作、読んでいただいてありがとうございます。 最近、短歌迷宮に迷い込みつつ、 というか、いろんな迷宮に迷い込みつつ、 夜は明けてまいりました… ぼちぼち、続けていきます。 と思ってたけど、 もっと根性入れて続けないと。 と思っている明け方でございました。 |
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