短歌人 8月号20代30代会員競詠
■風の気持ちの強さゆゑ■         勺 禰子 (しゃく ねこ)


自意識のかたまりのやうな思春期の少女集団で居れば疎まし

水玉色の水玉かなしピンク色の水玉いやらし水玉あはれ

軒下のあぢさゐのあを滴りてしみわたりゆく街にからだに

大抵は東に向かひ仕事する吾の先に君居ると思へば

雷鳴も生駒の腹も潜(くぐ)りぬけ君はわたしを抱きしめに来る

熱く熱く咽頭を落ちてゆく珈琲 爛れたしすでに爛れてゐたし

突然の雹(ひょう)になぎたふされたくて伸びたのか 青い草の溜め息

風の強さは風の気持ちの強さゆゑわれ吾(われ)も立ちたるまま風に向かふ



(小文・私の好きな動物)=歌とは無関係で左記の題で付す小文

■日本守宮(やもり)■
  初めて見たのはたぶん小学生のとき。
  生家の台所窓の外側に未確認物体発見。
  息を詰めて近寄る。ぴとっと張り付いた
  なんともいえないその足の裏の小ささと腹の白さとを、
  触ってもいないのに触覚で覚えている。

【2009/07/27 23:46】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(8) | page top↑
伊東吟行合宿 一日目 大室山から~下山 (副題:詳細記憶術やいかに)
大室山は異形の山だ。
普通、山には木が生えている。
なにも生えていない山はたいてい神聖化される。
富士山、しかり。
阿蘇山、しかり。
そして、なにも生えていないのはたいてい噴火による地質と関係するのだろう。
火を噴く山は、つまり神様なのだった。

と相変わらずな勝手な妄想をしつつ、吟行は始まっている。
てんでばらばらに歩く十七名。
ときにかたまり、ときに離れて、
のんびりとカルデラの頂上をまわる。
近くなのか遠くなのかよくわからない海が眼下に広がる。霞んでいる。
お地蔵様も見おろしている。

八ヶ岳地蔵尊

歌歴も、年齢も、越えて
「仲間」といっても、それぞれがちゃんとそれぞれで完全に独立していて、
好き勝手にやっているようでそれなりにお互い気を配りつつ、
ありえるようでなかなかありえない、なかなかいい感じじゃない?(笑)

「普通に歩いて20分」の大室山。
さすが、のんびり歩いてももう半分を過ぎた。

蝶々も飛んでいる。
黄色と黒色の蝶だ。動きがやたらに機敏。
この蝶は二日目の歌会でも話題になることとなる。

山側まで来た。
ここにもお地蔵様がいらした。
五智如来地蔵尊。
1663年、網元の娘が九歳で妊娠(!)。
ここ大室山の浅間神社に祈念したところ、無事安産したので、
「おはたし」と称して村の強力兄弟が一体の地蔵を3つに分割して、
計五体の地蔵を山頂まで運んだという…。
五知如来地蔵尊

五知如来地蔵尊2

強力だったばかりに山頂まで真鶴石で出来た地蔵を運ぶことになってしまった兄弟。
彼らのその後は、それに見合った保障をされたのだろうか…。
体がボロボロになって、仕事ができなくなったのか、
網元に認められて有力者になったのか。
看板には何も書いていなかった。
力太郎などの「よそ」から来た強力者は、昔から娘の婿などになるパターンが多い。
でも、「地元」の強力は…、「まれびと」でない「異端」に対する差別…。
なんとなく切ない運命しか想像できなかった。

あと大きめのカーブを一つまわれば一周だ。
歌はまったく出来ていない。
うーん、ま、今日中につくればいいんだし。

「大室山」の看板を囲んで、ちょうどその辺りにいた数人で飛んだり跳ねたり?しながら記念撮影。

先着組は…
なんか摘んでいた(笑)。ま、春ですからね。いいんですよ、摘んだって。
(そうです、4月11日のこと、今頃書いてます ^-^;)

さて、大概のアクシデントは集合時に既に済ませてあるので、
帰りは油断していた。

「あれ、リフトのチケットがない…」
Nさん、ありゃりゃー。
でも大丈夫。この山はノリ面に崩落の危険があるため、
かならずリフトで登ることになっているんですから、
ここに登っている人はかならず往復券を購入しているはず(だよね?)。
というわけで(だったかどうかは知んないけど)、
無事、全員リフトを降りて、バスで伊東へ戻る。

世話役数名はまた先行して荷物をつんで車に乗る。

一度通った道を帰るほうが早く感じる。
わりとすいすいと伊東へ戻る。
禰子は世話役組なので、車で宿の駐車場へ。
大型バスが停まっている。
ふむふむ、団体さんもいるのね。

なにげなく団体名を見る。
「風通しをよくする会」
ん?んん?
「C哲ちゃん、C哲ちゃん!コレコレ!これみて!」
「うわぁ!これはオモロイ!」

短歌界には有名な斉藤斎藤さん(も短歌人会の人です)の同人誌、「風通し」がある。
それを「よくする会」が「短歌人新人会」と同じところで一泊。
これは面白すぎる。。。

というわけで、宿についてまた爆笑。
風通しをよくする新人会??
隣りあわせだった。

というわけで、この項つづく。



【2009/07/20 01:43】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(7) | page top↑
闇にゐる蕾
暁を抱いて闇にゐる蕾 鶴彬

一般的に「反戦川柳作家」という肩書きを持つ鶴彬(つる・あきら)という青年が29歳で亡くなったのが71年前、そして今年は生誕百年だ。
生誕百年といえば、太宰治、松本清張と同い年になる。
去年、太宰と清張が同い年と知ってずいぶん驚いた。
鶴彬のことは全然しらなかったけど。

石川県今のかほく市で生まれた鶴は、
叔父の養子になり工場を継いだプチブルジョアの側に居た。
ただし、叔父の文学に対する理解はなく、隠れるように石川啄木を愛読、
その他の文学にも触れた。
ところが叔父の事業の失敗によって、職を求めて大阪にやってくる。
その後東京や金沢を往復し、居候生活を基本としながら、川柳を作り続ける。
社会の矛盾を自分の体に直接浴びたことで、元来持っていた資質がさらに先鋭的になり、
鶴彬の名を歴史にとどめたともいえるし、またある意味では彼の体を滅ぼした。
無防備ともいえるプロレタリア活動、それによる投獄などで、
29歳で捕らえられた身のままこの世を去った。

昨年、大阪城(軍隊の監獄があり、水風呂の刑に処せられていたところでもある)に冒頭の
 「暁を抱いて闇にゐる蕾」
という川柳の句碑が出来たことを知った。

社会のこと、自然のこと、愛のこと、どれにもあてはまるような素敵な言葉がある。
上の句はその一つだなぁ、と思う。


ほんたうに美味しい食べ物が、
白いご飯にも、日本酒にも合うやうに。

……どうやら、最後の二行が言いたかったみたいに見えちゃうなぁ。。。
ああ、せっかく至極真面目に書いたのに。

鶴彬
映画も出来た。お近くで上映会があるときは是非。
カテゴリとしては自主上映映画に近いものですが、それなりに。

そうそう、春に金沢に行ったとき、すぐ下まで行った、
卯辰山公園にも、鶴彬の句碑があったらしい。
春には全然しらなかったのに、それはそれで不思議なご縁だ。

東茶屋街
【2009/07/10 00:30】 | 日々雑記 | トラックバック(0) | コメント(5) | page top↑
七夕

暑い…。
こんな湿度の多いところで、何かをしづかに考えようとしてもちょっと難しい。
冷房を入れると肩が凝るし頭痛はするし。
(あ、家では冷房つけ(られ)ません)
なんで、こんなところで暮らそうと思ったのか、大阪人の先祖。
…そっか、昔は川があったから、か。
大阪八百八橋。水の都。
というわけで、イマイチ盛り上がっていないとは思いますが、
水都大阪2009、もうすぐです。
それで、天満橋の駅も八軒家浜も綺麗になってたのだなー、と今頃気付く。
あ、それで中之島線とかもできたの?もしかして。

船が行き交っていた頃の大川はどんなだったんだろう。
…なんとなく知っているような気分になるから、
記憶というやつは困る。

最近、この「知らなかったはずの記憶」が気になる。
千日前通りも気になる。
何か繋がっているような気がする。気のせいかもしれなくても。

もうすぐ天神祭。
これも大阪が水の都だったからこそ存在する祭礼。

水潜(くぐ)る夏鳥の朝騒めきて天満を揺らす催太鼓(もよおしだいこ)
                                    禰子
                                    初出2007.7(短歌人10月号)



【2009/07/08 01:22】 | 日々雑記 | トラックバック(0) | コメント(6) | page top↑
鮮魚列車
生きていたものの匂ひはきはまれり初夏の「鶴橋人情市場」  禰子

鮮魚列車

朝、8時50分ごろ、
鶴橋商店街(鶴橋人情市場)の上の近鉄鶴橋駅に生臭い匂いが漂ってくる。
「次に到着します電車は、一般のお客様はご乗車になれません」
というアナウンスが聞こえる。

通勤客を乗せる役目をとうに終えた、古い車両が4~5両ほど連結されて、
おそらく伊勢方面からの行商の人たちが、
発泡スチロールの箱を積んで各車両に2~3人ゆうゆうと乗っている。
そしてトビラが開いた瞬間、
まるで新宮の神倉神社の御燈祭(おとうまつり)の上り子たちのように、
いっせいに市場をめがけて走りだすのだ。
(いっせいに、というほど多くないけどNE!)

先日は通勤途上、匂いに「!」と振り返って、あわてて携帯のカメラで撮影。
今度は早めに行って、ちゃんと一部始終を撮影しようとおもう。

それにしても、「行き先」のところの「鮮魚」、
どうみても、「七国山病院」に似ている。

「となりのトトロ」のねこバスが、
メイちゃんとサツキちゃんをお母さんがいる病院へ連れて行ってあげるときに、
ううううーーーん!ぽんっと出す行き先板が「七国山病院」
(どれか一字が逆さになっていたはず)

鶴橋商店街は、
「千と千尋の神隠し」に出てくる商店街、
「目あります」とか「生あります」みたいに、
「豚足あります」の看板とか、包丁を研ぎながら、その包丁で
つい頭の後ろの痒いところを掻いてるおっちゃんがいる不思議な町。

Mr.宮崎は果たして鶴橋を知っているやろか。

それにしても。
「行き先」のところに「鮮魚」って、
「七国山病院」より先を行っている感じ!

鶴橋人情市場



【2009/07/04 23:59】 | ディープ大阪 | トラックバック(0) | コメント(10) | page top↑
短歌人 7月号
「テポ丼」に違和感を抱かず笑ふとき滅びてしまへり言の葉の国

「見せ消ち」といふやり方のその奥のづうづうしさを哀れさを思(も)ふ

海水を拒みをり人も拒みをる巌の意思の名を枯木灘

昨夜のこと思ひだしつつ南下する急行のなかは誰もが他人

前の席入力しつつ笑まひたる見知らぬ人にほぐされてゆく

羽だけの蝶々のやうなさくら散り眼に貼りついてそこからは、闇

                               勺 禰子 (しゃく ねこ)
【2009/07/02 00:32】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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