短歌人 2010年5月号卓上噴水
 
  暗越(くらがりごえ)奈良街道
  
                             勺 禰子(しゃく・ねこ)

猥雑にくりかへしては生れ消ゆる町に街道あまた交差す

鶴橋は焼肉のみがにほふではあらで鮮魚のあかき身にほふ

行き先は「鮮魚」と示されエプロンの伊勢湾の人ら乗る鮮魚列車

生きてゐたもののにほひがきはまりて鶴橋人情市場は充ちる

両岸に茶屋ありしといふ二軒茶屋跡から暗峠を目指す

旧道を辿り暗(くらがり)峠まで今日のふたりとして今日をゆく

すひかけのつつじがいきをふきかへしすひかへすやうなくちづけをする

きちんと育てられたんやねと君は言ふ私の闇に触れてゐるのに

夜が白みはじめるころにふくらみを増しくる咎を抱きつつ眠る

誰一人包むことなくひつそりと山に抱かれ眠る廃村

この雨と湿気を吸ひし十津川の黒き森育つやうに止まらぬ

野良猫は飼へぬわたしもそのやうなもので互ひの視線を逸らす

思ひ出せぬことだとしても前世をつぐなへと奈良はしづかに告げぬ

吉野葛白いダイヤをやはらかくふふめばやはらかに溶けてゆく

足早にゆく君の朝思ひつつ私も歩幅を整へてゆく

吉野では「鬼も内」だと君がいふ今年の桜はひとかたならず

残された後のひとりを思はせて乗り換へる山のホームは寒い

はつきりとわかる河内へ帰るとき生駒トンネル下り坂なり

相聞のかぎりと思ふ峠からみえる道行きみえぬ道行き

君を待つ峠の茶屋でひとり待つ夢の中では森はやさしい

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生駒越えで最も親しまれた暗峠は、大阪市内からほぼ真東にのび、
奈良市内に入ると伊勢本街道につながる。昨秋、大阪側の十数キロを旧道を辿り歩いた。
時おり幹線道路や新興住宅に分断されつつも、くねっとしたカーブを保ち、ほぼ旧道は残っていた。
昨年の続きから、今年は峠を越えようと思う。

                勺禰子( しゃく・ねこ)
                大阪府堺市生まれ。2007年短歌人会入会。

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短歌人誌の会員対象の「卓上噴水」(見開き20首・写真付(・ ・;))に、
このたび掲載していただきました。
短歌人誌が届いて、今月のブログのアップがほとんどなされていなかったことに気付く。。。
忙しかったのです。。。
この春から半年間、学生生活することになりました(^-^;
何がうれしいって、学割が使える(らしい。早く恩恵にあずからねばねば)。
新人会の吟行合宿も無事終了。
落ち着きましたらぼちぼちアップします。今あっぷあっぷしてるのは私(あ、おやぢぎゃぐ)。

【2010/04/28 23:43】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
008:南北 (勺 禰子)
南北に商店街は刑場の名を墓地の名を消さず 千日前
【2010/04/05 00:24】 | 「題詠blog2010」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
007:決 (勺 禰子)
選べないことの多さよ決定権あるはずもなく有限を生く
【2010/04/05 00:11】 | 「題詠blog2010」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
006:サイン (勺 禰子)
手に入れるものにはサインを離れゆくものには署名をする会者定離
【2010/04/04 23:56】 | 「題詠blog2010」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
005:乗 (勺 禰子)
乗り、越える。二つの動詞を恙無く成さむと来迎図を見て思ふ
【2010/04/04 23:40】 | 「題詠blog2010」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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