短歌人 2012年1月号
夕映えの川面 静かに並びゐてそれでも既に駆けだしてゐた

坂道を上り下りする毎日の過ぎゆきて、また寒露も過ぎぬ。

あらみたまさかゆる国の海に来てまた帰りゆく 陸奥の海より

細くない縁と思ふ山麓のゆふやけが闇に変はりゆくとき

半月に照らされパレス温泉は残り湯をいま吐き出だしつつ

惨劇といふはたやすきことならず赤き腹みせ百足死ぬとき

一斗缶下げし男のゆくすゑを誰も忘れて暮るる上町

                     勺 禰子(しゃく・ねこ)

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2011年、今年もいろんなことがありました。
目に見えた変化も、目に見えぬ変化もあり
変わるということのみが、変わらずにあるということを
改めて感じる次第です。

震災のことについては、
自分は何か語れる立場にいないというスタンスで、
結局きてしまいました。
無責任なことを書いている人たちよりマシ
というわけではまったくなく、
同等に私もまた無責任なのだという自覚はあります。
いつか何か書けるかどうか、それはわかりませんが、
このことについては少しでも自覚を持っていたいと思います。

自分にできる表現の中で考えると、
今年はちょっとした飛躍の年でもありました。
「ささぶね編集工房」という、実体のない「ことば」だけの存在が、
社会の構成員としての存在はともかく、
まがりなりにも手を持ち、足を持ち始めた年であり、
私自身の歌も、文章も、商業誌のかたすみに場所をもらった
(これからの分も含め)、初めての年でありました。
また結社誌に初めて評論、らしきものを書かせていただいた
うれしい年でもありました。

今年はいろんなことがラッキーに動いたという自覚のもとに、
来年はラッキーだけでなく、どう動いていくか
より自覚的に、しかし計算的打算的なのではなく、
あるべきところへ向かってゆきたいと思います。

みなさまには今年も大変お世話になり
ありがとうございました。

来年がそれぞれにとってよいことを見つけられる年でありますように。
どうぞよいお年をお迎えください。

勺 禰子(しゃく・ねこ)

パレス温泉
【2011/12/31 10:27】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
パレス温泉
「パレス温泉」
           勺 禰子(しゃく・ねこ 短歌人)

山腹の石灯籠につらなりてふるへるやうに点る色町

一息に石の階段かけぬけて生駒颪を吸ひこんでみる

峠から夕日が照らすたまゆらを浴めばすなはち歓喜天笑む

その栄華あますことなく失ひし参道が残すパレス温泉

君により思ひならひぬ前世の記憶がひらきだすときの音


『NHK短歌』2012年1月号 「ジセダイタンカ」に寄稿しました。
本屋さんで見かけたら立ち読みしていただけましたら幸いです(p92)。
【2011/12/27 23:50】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
しわす
偶然というのは結構こわい。
偶(たまたま)は然(しかり)の一形態であるということだ。

なので、
あすこで1つ前の電車に乗っていたら、とか
なぜあのときわざわざ、ここからあちらへ動いたんだろう、とか
考えてもあまり(ほとんど)意味がない。

それでも人はうじうじする。
なんであのときああしたのか。
偶然をのろったり、
偶然を運命と感じるのは自由だけど、
どちらも、何の救いにもならない。

というわけで、
遇でも必でもいいけど、その「然」を引き受けよう
と思えて、はじめてちょっと落ち着きました。

ぜぃぜぃ。
夜中の独り言でした。



【2011/12/07 01:07】 | 日々雑記 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
定点移動 ―「舟」Vol.19号より―
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「定点移動」            勺 禰子

雲ふかき生駒の山に吸はれゆく快速急行出口あやふし

脇腹の穴をいまではうべなひて潜らせてゐる萬葉の山

大和から差し込む朝の陽を浴びて黒猫つやつや線路横歩く

これからは冬のふるへをうつしゆく車窓にときどき浮かぶ河内湖

この地層には記憶あり 人を越え土を越え朝の空気のよどみ

冷え込みは朝の景色を黒タイツ一色にして街路樹は映え

電気予報いつしか消えて暖房は冷房の三倍の消費電力

雨の日も晴れの日もしづかに流れをり市営地下鉄階段の溝を

不義理無沙汰を集めてはやし生活の糧とたはむれ御堂筋ゆく

たはむれに朝放り出し夜になり吾を受け容れる山の腹に入る

スカイツリーより八メートル高ければ生駒山上遊園地の快
勺・上
勺・中
勺・下
勺・最下

子犬呼ぶみたいに君は手を叩く永劫回帰の呪文みたいに

十五夜の全き月の刹那なう。こんどの生もまた赦されず

仮想峠を毎日越えて旅をする嗚呼こんなにも毎日は旅

                        
  しゃく・ねこ/大阪府堺市生まれ、
  二〇〇七年短歌人会入会、二〇一一夏より奈良県生駒市在住。

現代短歌「舟の会」機関誌に3回目の参加。
定点観測というより、最近定点移動しかしていない感じ
がする…けふこのごろ。
【2011/12/05 22:16】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
短歌人 2011年12月号
天象儀を並び見上げて手をつなぐこと易ければこそ 触れざりき

山麓のゆふやけが闇に変はりゆくときの光は薄く貫く

耕せばいよいよ潜るものありて真黒き土の匂ひのみ嗅ぐ

まだ荒れてゐた吾の手を天守閣ならび見しのち初めて君は、

大阪の筋一本を渡り切る難波駅を西から東へ

爪先に雨じんわりとしみてきて君にほぐされゆくまでを待つ

重吉のやうに光に「いつまでもかなしかれ」とただ貫かれゐる

                     勺 禰子(しゃく ねこ)


ことしは…題詠ブログ、ぜんぜんできませんでした。。。
少し籠もるときなような気がします。
ぽつぽつと詠んではいるのですが…
そのうち、お目にかかります。

【2011/12/01 23:55】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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