父の盃 ―「舟」Vol.20号より―
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「父の盃」            勺 禰子

をのこ欲りし父が次々購ひし超合金は部屋にあふれて

とんち話の主人公なる父の名が恥づかしかつた学級名簿

男なら英彦といふ吾なりきサックス奏者と父の名により

ズボン裾の長い男とよもや連れ添ふなと幼き吾にのたまひき

そのかみのアイビールックを七歳の吾に刷り込みし父の満足

一度だけ叩かれしこと。理由なぞ忘れ去られて残る手のひら

手のひらの意外に軽き風圧は弱さやさしさ、同じことだが。

西洋にかぶれつづけて七十余年(ななそよとせ)最近演歌も好きといふこと

色彩の分からなくなる父の目に口に、たくあん紙のごとしも

アルコホル分解力を受け継ぎてまだ一献の機会のなきまま

ただ一度きりの二人で出かけたる池のほとりの柿の葉寿司屋

二十四の吾はお酌を知らざれば手酌の父さへ記憶にはなし

もう酒を受けつけられぬ父の前 見えぬ盃このごろ見える


  しゃく・ねこ/大阪府堺市生まれ、奈良県生駒市在住。
  

現代短歌「舟の会」機関誌に4回目の参加。
特別話をすることなくいつしか実家を出て(←わたしが、ねw念のため)、
また、近年はさらに疎遠になっていた父ですが、
病ですっかり様変わりしてしまった父を
一度詠んでおきたく思い、
なんだかいつもの歌らしからぬ一連となりました。

わたし・・・ぶさいく赤ちゃんーー(><)

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【2012/06/04 00:06】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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