冬なのにほたる
もう十五年も前に、まがりなりになんとか分量だけは揃えた卒業論文の一行目が次の歌だった。

 物思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂かとぞ見る  和泉式部

古典に造詣が深いわけでもなかったし、ましてや日本文学科ではなく、哲学科だったというのに、
なんで一行目がこれやったんやろ、と思う。
たぶん、高三のときに通っていた予備校の古典の先生がテキストにしていた新書サイズの小さな本の冒頭がこの歌だった。その先生は「いわゆる予備校の先生」っぽくないずいぶん年配の先生で、あんまり人気もなくて気の毒な感じさえする先生だったけど、基本的なことをきっちりと話してくれて、私は結構ちゃんと話を聞いていた、と思う。そのときに「あくがれ」の「がれ」が「離(か)れ」だと知ったのかどうか、もう覚えてはいないけど、そのようにしてたましひは遊離する、しかも「あこがれ」という今でも日常的に使われる言葉が、人の命さえ左右する言葉だった時代があるんだ、ということが強く印象に残って、その後の私の何らかの方向付けをしたのかもしれないとさえ思う。

ちょうど病気で入院中に書き上げた卒論は、もう読み返すのも赤面ものなのだけど、ここでも何回か書いているかもしれないけどそのころはまだちょこっとノートに門外不出の短歌を書き留めるだけだった私が、十年ののち、いくらかきちんと向き合うかたちで歌を詠みはじめたのだから、その不幸な卒論ももう一度読み直して何を書きたかったのか昔の私の意見も酌んであげなければ、と強く思うようになってきた。

ちなみに卒論のタイトルは「折口信夫による古代日本人の霊魂観念」(すでにうろ覚えですが たぶん)

   なんちう怖いもの知らずのタイトル…。

以上とりとめのない雑感でした。


【2009/12/15 00:18】 | 日々雑記 | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
<<おん祭り など | ホーム | 電飾中之島>>
コメント
卒論を書けばよかった。
僕は卒論を書かずに単位取得で卒業したのですが、今思えば比較翻訳論かなんかで書いておくべきだったと思います。在学中にある先生に相談したら「それはテーマにならんやろ」と言われたのですが、書けていたかもしれません。

相変わらず文章は下手で、論文を書いても「エッセイのような文体」と言われたりするわけですが。(だめだこりゃ。)
【2009/12/15 20:11】 URL | H.IBA #-[ 編集] | page top↑
卒論て書いたことがない。
僕は卒論は書かずに中退したのですが、今思っても、卒論と言う言葉さへ忘れておりました。
代わりに自主退学の辞という文を提出してやめました。たしか大学の教員諸君を罵倒したような。70年安保の直後の時期が時期でしたから。

隔世の感あり。人生流転やまず。苦しみ多し。しかし捨てる神あれば拾ふ神あり。結局万事ありがたし。而して漸く寿命いたれば、それぞれ順次たふれてをはる。
【2009/12/15 23:08】 URL | 知哲 #hurAyYjo[ 編集] | page top↑
50枚の辞表
さきほど知哲さんのブログのコメント欄に「罵倒」の語を書きましたら、おお、知哲さんも・・・^^;

僕の知り合いに某自治体の職場で「革命的」な組合活動を展開しようとして挫折し、その「総括」50枚をもって辞表とした、という変わり者がおります。こんな辞表は初めて見たよ、と苦笑されたそうです。
【2009/12/16 06:19】 URL | tamaya #wMURzdEY[ 編集] | page top↑
またまたまとめて失礼します
■H.IBAさん

そうですか、でもきっとその思いがあれば、いつか書くことがある、と思います。
楽しみにしていますよ。

■知哲ちゃん

時代が人生そのものになるときもあるよね。
戦争、安保…大きな出来事はわかりやすいけど、いつでも時代があってその中で生きているから。
>人生流転やまず
しみじみ実感してしまふなぁ、禰子アラフォー(=不惑、ともいふのに…)につき。
流転している、と実感しているとき、案外その流れのなかでしづかな気持ちでゐる。
さうは言つてもどのやうにたふれてをはるのか。
案外ジタバタしさうやな、わたし(苦笑)。

■tamayaさん

おお、50枚とな。
立派な論文ですよね~。是非冊子にしてほしいですねー(してるかも?)。
そっか、一首への「詞書」として、論文を作成することもできるのですね。
と、なぜなんだかこの「50枚の辞表」で妄想してしまいました。
【2009/12/20 22:08】 URL | 禰子 #xNtCea2Y[ 編集] | page top↑
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://chipoo.blog84.fc2.com/tb.php/473-f5bcc5c8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |