歌の円寂する時 2
それで、肝心の「歌の円寂する時」ですが、
これは折口信夫が大正15年に「改造」誌に寄せた短歌滅亡論。
そのときの特集名は「短歌は滅亡せざるか」。

矢嶋氏は「勺禰子は釋迢空を敬愛し、大学の卒論に釋迢空を選んだ。よき弟子になった、さらに奮励努力をし、歌と批評をふたつながらに充実しとどこおる無き勢いを持続されたい。」と書いてくれているが、大学生の時の私は、実作は時々ノートに走り書きするくらいで、人に見せたことはほぼ皆無であり、卒論も短歌とは違い宗教哲学としての提出だった上にええかげんな卒論だったので、未だに劣等生のレッテルを自らぬぐい難く。。。
でも、やはり方向性としては間違ってなかったんやなー、と思うのは確かです。

で、「歌の円寂する時」。
84年前に言われていることと、今の現状のあんまり変わっていないことに改めて驚くというか驚かない。
まず、
「歌を望みない方へ誘う力は、私だけの考えでも、尠(すくな)くとも三つはある。」と折口は言う。
そしてそれは
 一つは、歌の享(う)けた命数に限りがあること。
 二つには、歌よみが、人間の出来て居な過ぎる点。
 三つには、真の意味の批評の一向出て来ないことである。

とし、二つ目の人間の出来て居な過ぎる点に関しては「――私自身も恥しながら其一人であり、こうした考えを有力に導いた反省の対象でもある――」という注を入れている。

そして、
「分析的な微に入り、細に入り、作者の内的な動揺を洞察――時としては邪推さえしてまで、丁寧心切を極めて居る批評」は批評ではないとし、「そうです。そんな批評はおよしなさい。宗匠の添刪(てんさん)の態度から幾らも進まないそんな処に彽徊(ていかい)して、寂しいではありませんか。勿論私も、さびしくて為方がないのです。」と言い、それは過去自分もそうであり、また流行の首謀者でもあったから、今一度正しい批評を発生させねば申し訣(わけ)のない気にさせられる旨を告白している。
また、
「その如何にも批評らしい批評がいけないとすれば、どんな態度を採るのが正しいのであろう」として
「ほんとうの批評は、作物の中から作家の個性をとおしてにじみ出した主題をみつける処にある。(略)けれども主題と言うものは、人生及び個々の生命の事に絡んで、主として作家の気分にのしかかって来た問題――と見る事すら作家の意識にはない事が多い―― なのである。其をとり出して具体化する事が、批評家のほんとうの為事(しごと)である。さすれば主題と言うものは、作物の上にたなびいていて、読者をしてむせっぽく、息苦しく、時としては、故知らぬ浮れ心をさえ誘う雲気(うんき)の様なものに譬(たと)える事も出来る。」

うーん、めちゃ面白いやないですか、折口はん。

「小説・戯曲の類が、人生の新主題を齎(もたら)して来る様な向きには、詩歌は本質の上から行けない様である。だから、どうしても、多くは個々の生命の問題に絡んだ暗示を示す方角へ行く様である。狭くして深い生命の新しい兆しは、最鋭いまなざしで、自分の生命を見つめている詩人の感得を述べてる処に寓(すま)って来る。どの家の井(いど)でも深ければ深い程、竜宮の水を吊り上げる事の出来る様なものである。此水こそは、普遍化の期待に湧きたぎっている新しい人間の生命なのである。叙事の匂いのつき纏(まと)った長詩形から見れば、短詩形の作物は、生命に迫る事には、一層の得手を持っている訣(わけ)である。」

う…第一章「批評のない歌壇」の引用に終わってしまいましたが、また後日。

引用元:青空文庫
【2010/03/16 01:18】 | 歌会・その他短歌 | トラックバック(0) | コメント(10) | page top↑
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コメント
おはようございます。
今朝の勤行は、禰子さまの紹介くださった青空文庫により折口の文章を読むという一事に忽ち変更せられたのであった。^^;

しかし、折口さんの文体、ねちらねちらと来ますね。

青空文庫は横書きで読むことになるのが難点ですけど、便利ですよね。先日、さる題詠にて花袋の「蒲団」を詠み込んだ一首が浮かんで、青空文庫にて久々に「蒲団」を読んでみたのですが、今にして(というかこのトシにしてというか)読むと、花袋先生がリキんでリキんで書いているくだりなど、失礼ながら思わず笑っちゃいました。
【2010/03/16 07:39】 URL | tamaya #wMURzdEY[ 編集] | page top↑
禰子さん

今日は。

禰子さんの紹介してくださった内容、本当に面白いですねv-41v-56v-41v-22
ぜーんぶ引用させてもらひますv-10


「ほんとうの批評は、作物の中から作家の個性をとおしてにじみ出した主題をみつける処にある。(略)けれども主題と言うものは、人生及び個々の生命の事に絡んで、主として作家の気分にのしかかって来た問題――と見る事すら作家の意識にはない事が多い―― なのである。其をとり出して具体化する事が、批評家のほんとうの為事(しごと)である。さすれば主題と言うものは、作物の上にたなびいていて、読者をしてむせっぽく、息苦しく、時としては、故知らぬ浮れ心をさえ誘う雲気(うんき)の様なものに譬(たと)える事も出来る。」


だから、どうしても、多くは個々の生命の問題に絡んだ暗示を示す方角へ行く様である。狭くして深い生命の新しい兆しは、最鋭いまなざしで、自分の生命を見つめている詩人の感得を述べてる処に寓(すま)って来る。どの家の井(いど)でも深ければ深い程、竜宮の水を吊り上げる事の出来る様なものである。此水こそは、普遍化の期待に湧きたぎっている新しい人間の生命なのである。叙事の匂いのつき纏(まと)った長詩形から見れば、短詩形の作物は、生命に迫る事には、一層の得手を持っている訣(わけ)である。」



ドカンときますねv-17
納得ですv-237

おととい?NHKテレビで吉本隆明氏の講演が放送されましたが、そこで触れられた「第二芸術論」についての氏の意見が、この引用部分で重なってくるように、私には思えます。
【2010/03/16 13:26】 URL | ラマーレ #-[ 編集] | page top↑
はじめて知ったblue books
いやあ、勺禰子はなんでもし知っとー(←う音便)な。
青空文庫て、いままで知らなんだ

いま覗いたけど、旧漢字なんかもしっかり表記してあって感動をおぼえました マル。

折口の知の巨大、奥行き深さ、文体の捻じれによる学問的対象への襞襞への捻じれこんでゆく思考方法は、日本でも世界でも 
唯一
といっていいものかも知れませんぜ(←ぜ音便)。

この知と情のスケールは、空海か、司馬遼太郎くらいか、過去の日本人でたちうちできるのは。

「情」ということでいえば、日本人史上最深のものあると、わたしなどは思っている。
【2010/03/17 00:38】 URL | 矢嶋博士 #WGj0Orxo[ 編集] | page top↑
■みなさま

いやぁ、改めて読むとこんなにスリリングな文章を書いていたんだ、シャクチョウクウ。

これから少し勉強をしなおしていきたいと思います。

勤行、わたしもしよかな。
吉本、わたしもちゃんと読まないと。
ゼ音便、えええーーっ(笑)そら、つかわなあかんぜ。
 う、、、あかんで。デ音便になるぅ。
【2010/03/17 15:31】 URL | 禰子 #xNtCea2Y[ 編集] | page top↑
吉本なんか読むなら富岡多恵子が先
富岡多恵子の全仕事・岩波。2000年ごろの岩波短歌講座7巻、のうちの富岡の全発言、釋迢空ノートをよむべしや。

私見によれば、吉本は一切読む必要なし。
歴史的な存在にさえなっていない。

さいきんは特に、支離滅裂、聞く価値いっさいないものだ。
【2010/03/17 16:08】 URL | 矢嶋博士 #WGj0Orxo[ 編集] | page top↑
まぁまぁ
■やっしぃ

せやった。富岡多恵子!
途中で止まっている…(・・;

ま、でも吉本もちゃんと読んでないから、読まないと文句もいえへんし。
結婚も離婚も(転職も)経験しないと語れないこと多いからなぁぁ。。
と、その昔二十歳の乙女であった吾は同じく乙女であった哲学科の友人と語り合ったことよ。
【2010/03/17 16:12】 URL | 禰子 #xNtCea2Y[ 編集] | page top↑
私は今も乙女なんですからね!
年齢は倍ですけどね!笑
【2010/03/18 09:18】 URL | ともみ #lyaUAlzc[ 編集] | page top↑
乙女保存法
■ともみ

いやぁ、倍て!!
軽い眩暈が…。
じゃ、わたしとともみで
乙女4人分やね(爆)
アラ還になったら乙女6人
アラ傘寿になったら乙女8人
アラ…
【2010/03/18 15:24】 URL | 禰子 #xNtCea2Y[ 編集] | page top↑
ワシは3乙女歳
や。
こんど金のヅラつけてあらわれたら、逮捕されるかな。
軽犯罪法、違反で。

表現の自由といへども。
【2010/03/20 13:48】 URL | 矢嶋博士 #-[ 編集] | page top↑
そっか!3乙女
■やっし

サオトメとは、いつまでも乙女ということだったんか。
でも、わたしと友はええとして、
ヤッシーが乙女…
おまわりさーーーっ

この場合、表現の自由は制限されうる。場合がある。
【2010/03/20 14:07】 URL | 禰子 #xNtCea2Y[ 編集] | page top↑
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