「記憶」―日月宙より―
「記憶」  勺 禰子(しゃく・ねこ)

内臓と女性について語り出す束の間。天井から蒼(あを)が射す

かなしみの鳥居と見ゆるそこここは潜(くぐ)ることのみ、玉津交差点

くちびるできみをふふめばたちまちにふふみかへされる昼のしづけさ

Dead Sleep 夜毎に死ぬる祝福を今生に知らぬフンボルトペンギン

一点の曇りなき空 咎といふ言葉たくみに隠されてゐる

凍み豆腐吊るされたまま廃屋の軒下の空気だけがねぢれる

峠から眺めるときに思ひ出す 女郎のあたしを殺めたをとこ

はじめてのそして最後の夕日浴び解体家屋はからだを開く

匂ひから君とひとつになつてゆく隧道(とんねる)のやうな闇さへ光

耐へられぬ軽さなぞなく存在といふ救ひあり いふ地獄あり

植ゑられし花は刈られん。わたくしは山に居ずとも密やかに咲け

ベルリンもベンツもBで始まれどモンゴロイドのVの幻聴

この師走クリスマス色に彩られほんまにうれしいんか?通天閣

上映会なれば見知らぬ人たちと並び観てゐる金魚の交尾

地は破る、いや千早ぶると打ちたきにIME変換は唐突に覚醒す

うつそみのものとしてある夕焼けの川面が櫂を揺らしてをりぬ

君帰り河内にひとり眠る夜の君の匂ひのすれば、泣かぬよ

風の強さは風の気持ちの強さゆゑ吾も立ちたるまま風に向かふ

念仏の如く呪文のごとくその意味から解かれ、やみに触れたり

もうなにもしんぱいせんでええんやと言はれてるやうな「おやすみ」の声


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石関芋平さん主催の「日月宙」に参加させていただきました。
既出歌でもOKとのことで、
3年ほど前からの短歌人誌に発表した歌で、
まとめてみたかったものを。

連作ではないのに連作みたいになるというのは、
長所でもあり、かなり短所でもあるということは
自分が一番よくわかってはおりますが…。

でも、まとめられてよかった。
お声をかけていただいた花森こまさまにも感謝。
ありがとうございました。

そして最近のわたくしは…
もっとちゃんと詠まねばならぬ。
おのれが、一番よくわかっております。。。



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