短歌人 2018年3月号  恋の顛末
※今月は月例詠草ではなく、巻頭の「3月の二人」というコーナーに、
  春野りりんさんと一緒にそれぞれ14首ずつ掲載いただきました。
  来月号にお互いの評が掲載されます。
 
 恋の顛末
 
   おそらく明治三十二、三年頃
駈落ちをして新宮を遠ざかる曾祖父母を射す峠の夕日

   宮大工と神社の娘と聞きしかど
戸籍には「ひさ」と載りしが曾祖母は「マツ」と呼ばれてその人は誰
 
和歌浦に身投げ心中したといふ大伯父と眠る小菊とは誰
 
初読時は色も匂ひも味も知らずにゐた『枯木灘』冒頭の茶がゆ
 
紀伊半島を中上健次は下半身と言ひ性のメタファいや性の現実と言ふ
 
半島を巡る一統のものがたり訊き損ね皆死んでしまへり
 
   『紀州 木の国・根の国物語』
本を頼りに週末ごとに半島を経巡りし過去を忘れてはならず
 
中辺路で媼と翁に出遭ひたれば烈しき恋の顛末を聞く
 
三人の子を置き出奔したといふもこの半島に仕組まれしこと
 
あらたに子を生しし媼は唐突にうちの嫁にならんかと妖しく笑ふ
 
餓鬼阿弥の土車引く一行と擦れ違ひたり 夢にはあらず
 
   道義とは踏み行ふべき正しい道とかや
踏み行ふとは何か踏みつつ何か行ふ動作ふたつの時差を思へり
 
吾は何を見込まれたのか今となれば吾は気づいてゐたと気づきぬ
 
あるべきやうに大地は踏み分けられてゆく道ならぬものがつくりだす道
 
                         勺 禰子(しゃく・ねこ)

クリックすると大きくなります。
201803短歌人3月の二人「恋の顛末」勺禰子
【2018/02/27 19:18】 | 短歌人誌 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<短歌人 2018年4月号  思ひ出す事など | ホーム | 短歌人 2018年2月号  父のジャケット>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://chipoo.blog84.fc2.com/tb.php/883-49773ae0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |