2008.07.28

短歌人 8月特集

「途上の家族2」勺禰子

「これが最後のチャンス!」と毎月送られてくるベネッセの「こどもチャレンジ」

午前二時源氏物語の朗読が流れはじめた。合図のやうに。

はらはらと桜隧道(さくらトンネル)うづたかく積もりて吾(われ)の出奔を消せ

落ちたての花びらを轢く感触のなまなまと車輪伝ひ登り来(こ)

あたらしい街の自転車みな早く、あぁ坂道が少ない所為だ。

三日月は中有の中をさまよひて行方不明のやうなベランダ

パリパリと水菜に音を出させては口中に夏をひろげてゐたり

郵便が届かない日が三日間。知られぬことの快楽として
Posted at 22:11 | 短歌人 | COM(0) | TB(0) |
2008.07.28

作品月評 6月号

耐へられぬ軽さなぞなく存在といふ救ひあり いふ地獄あり


ミラン・クンデラの長編小説「存在の耐えられない軽さ」から言葉がとられている。それを引っくり返すかたちで、個人的な現実にひきつけてみせる才気が輝いている。(藤原龍一郎)

藤原さん、ありがとうございますm(_ _)m
Posted at 22:02 | 短歌人 | COM(0) | TB(0) |
2008.07.16

054:笛 (勺 禰子)

野仏に篠笛ひとつ供へられし故に鞍馬の夏を忘れず。
2008.07.16

053:キヨスク (勺 禰子)

キヨスクでマスクを売つて呉れました老夫婦失せて自販機聳ゆ
2008.07.16

052:考 (勺 禰子)

「考へても、考へなくても同じこと。」 匙を投げたのではありませぬ。
2008.07.16

051:熊 (勺 禰子)

目の前の熊蝉が土に潜りゐし六年前、の二人の距離は
2008.07.14

050:確率 (勺 禰子)

確率は万分の一 億分の一だとしても必然はある
2008.07.14

049:礼 (勺 禰子)

「礼の限りを尽くさむ」といふふとどきな言葉使わずいのち終えたき
2008.07.14

048:凧 (勺 禰子)

いつの間にするりと抜けて凧の糸 法則じみて視界から消ゆ
2008.07.14

047:ひまわり (勺 禰子)

二上の峰這ひまわり魂よばふ人聲 幻聴なのかわからぬ
2008.07.14

本歌

「日本脫出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも」 
                         
                             塚本邦雄 『日本人靈歌』1958


本歌取りというにはおこがましいですが・・・。


『日本人靈歌』 跋
 今日の定型詩人のもつ使命と愉楽は、魂の、すなはち言葉の美と秩序を喪失した、現代人間社會のいたましい精神像のなかで、しかもなほ、定型詩が原初的にもつ美と秩序を信じ、これを極限までととのへ且つ高めようとする絶えざる緊張と努力にあるだらう。
 この作品集で、僕は短歌といふもつとも古典的な定型詩の内蔵する、重要な機能の一つである暗示力をつよく喚起して、一種の默示録(アポカリプス)的世界を形成し、その時間と空間をこえたリアリティをもつて今日の現実の世界に参加しようと試みた。
 全作品の主たるモティーフは、不條理にみちた外部と、日本人である僕たち一人一人のきずついた魂の拮抗と融和であり、方法的には譬喩の徹底した活用によつて、短歌に於けるイマジスムの可能性をためした。
 短歌こそ日本人の、今日の、永遠のスピリチュアルである、その輝かしい不幸の確認と證明へのこれはささやかな、しかも切實なトライアルである。
 一九五六年夏から五八年夏への二年間の作品、四百首を編輯した。

一九五八年九月
塚本邦雄


塚本邦雄(1920年8月7日 - 2005年6月9日)



2008.07.14

046:設 (勺 禰子)

建設的解消したし飼い猫も疲れた飼い猫飼育係も
2008.07.14

045:楽譜 (勺 禰子)

作曲家が死んでも演奏家がいなくなっても楽譜が残ってるから。
2008.07.13

044:鈴 (勺 禰子)

その鈴をもとめし秋の神宮寺に君があゆみて観る曼珠沙華
2008.07.13

043:宝くじ (勺 禰子)

太地町の宝くじらを思ふとき、熊野灘とふ響きの昏さ